中小企業の現場では、「ちゃんと話し合って決めたはずなのに、また同じ説明をしている」という場面が少なくありません。その原因は、能力不足や意欲の問題ではなく、
合意した内容が記録として残っていないことにあります。
<ある会議での、よくある事例>
以前、設計部門との会議で「組立における接着剤の指定方法」について説明したことがあります。内容は非常にシンプルで、
・接着剤の種類
・塗布範囲
・塗布量(重量)
この3点を定義しておくのが基本である、という整理でした。少し考えれば分かる話であり、その場にいた設計部門の方々も「なるほど」と合意していました。ところが、数週間後、同じような接着剤の話になった会議で、設計部門の方からこう聞かれました。「何を書くんでしたっけ?」つまり、内容は覚えておらず、「あなたが何か整理した説明をした」という記憶だけが残っていたということです。
<合意は、記録されて初めて組織の決まりになる>
この出来事は、特別な話ではありません。人の記憶としては、むしろ自然なことです。問題は、その場で合意した内容が、議事メモとして残っていなかったことです。もし、【決定事項】
接着剤の指示は①種類、②塗布範囲、③塗布量(重量)の3点を必ず明記する、この一文が議事メモに残っていれば、数週間後の会話はこう変わっていたはずです。「量は何グラムにすればよいでしょうか」同じテーマでも、議論は前に進みます。
<議事メモがないと、属人化が進む>
議事メモが残らない組織では、次のようなことが起こります。
・問題は解決されます
・しかし、なぜそう判断したのかは残りません
・残るのは「誰が解決したか」だけです
すると組織の中では、「あの人が詳しい」「あの人に聞けば早い」という認識だけが強化されていきます。その結果、内容や判断基準を理解しようとしない組織になり、特定の人を呼ぶことで仕事が回る、属人的な体制に戻っていきます。これによって経営者が「専門家の集まりで強い組織」と誤解してしまうことは実際には属人化のリスクです。
<標準化は、実はそれほど難しくない>
標準化というと、分厚い手順書、完璧なマニュアルを想像しがちですが、最初からそこまで必要ありません。まずは、会議で合意したことを議事メモに一行残す、これだけで十分です。その議事メモが、次の会議で参照され、同じ判断が繰り返され、いずれ手順として定着する、という流れが生まれます。
<習慣化しないと必ず元に戻る>
重要なのは、何もしなければ、組織は必ず属人化に戻るという点です。人は忘れます。異動もあります。忙しさで優先順位も下がります。だからこそ、議事メモを残す、過去の記録を前提に議論する、という習慣が必要です。これは一度決めて終わりではなく、
繰り返し使うことで定着するものです。
<経営者が決めるべき、たった一つのこと>
議事メモを残すかどうかは、現場任せにすべき話ではありません。経営者が決めるべき方針は、これだけです。何かを決めた会議では、必ず簡単な議事メモを残す。完璧である必要はありません。重要なのは、残っていることです。
中小企業で製造業の皆様へまとめ
・ 経営者は「議事録見せて」と都度問いかけることで作成を促しましょう
・ 実際に議事録を元に質問を頻繁に繰り返すと習慣化します
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