製造業における金型は大量生産に必要な工具であり、品質の要です。その特徴は下記です。
・品種ごとに生産される特注品である(汎用品でない)
・量産以前に高額の投資をして完成させる必要がある
・多くが固定資産に該当し、量産開始から償却する
・その金型での生産数と金型の寿命が予測しづらい
・金型には発注者(金型所有者)が知らないノウハウが含まれることが多い

作成ツール: OpenAI DALL·E
特に先行投資による資金繰りと、生産数が予測できないことから、金型を使って生産を行う製造委託先の部品単価に金型費用を付与して支払うのは難しくなります。特に生産数が予測できないので、金型の代金を部品の納入単価に付加して顧客に請求した場合、必ず金型代金が回収できないか、回収金額を超えて請求してしまうか、量産中に回収が終わった時に速やかに単価改定の手続きを行う手間が発生します。
それを避けるため、部品発注者である顧客(大手メーカー)が金型の所有者となり、製造委託先に貸与資産として登録運用することが多くなります。実際にはさらに下請法(下請中小企業の保護のための法律で契約よりも優先される)を考慮すると運用はかなり煩雑になります。
これは日本の製造業全体で似たような悩みを抱えており、経済産業省や公正取引委員会でも微妙な部分についてガイドラインなどを公表して一定の運用を定めています。一方で正しい運用に近づくほど、発注者(大手メーカー)と受注者(中小下請業者)の双方で詳細な管理が必要となるジレンマがあるのも事実です。
<官公庁が公表している金型管理についての方針や対応の例>
令和6年度 | 公正取引委員会
型管理の適正化に向けたアクションプラン(METI/経済産業省)
この状況で双方の考えを予想してみます。
<発注者の視点>
・金型管理そのものは付加価値を生まないので手間をかけたくない
・製造委託先に負担を強いることは望まない。双方で納得できる方法を選びたい
・公正取引委員会などからの問題の指摘と報道による企業ブランド毀損を避けたい
・金型保管料が請求されたら払う準備がある。だが公平な定額を定めるのは困難である
・全ての受注者に金型保管料の算出と請求を要求するのが受注者保護なのか疑問だ
<受注者、製造委託先の視点>
・下請法に守られるとはいえ、そのために管理コストが上がるのはつらい
・下請法を楯に発注者に従来と異なる運用や費用負担を要請することは難しい
・金型保管料の算出は「使用していない金型」の条件が明確になる必要がある
・金型保管は変化するため、一定の保管料の根拠を求められると説明できない
中小企業で製造業の皆様へまとめ
・官公庁と法律(下請法)が求める理想的な金型管理方針を知っておきましょう
・自社で管理している貸与資産金型は一年に一度、発注者に報告して廃棄もしくは返却の判断をしてもらい、その回答の記録を残しておきましょう。
・1年以上受注していない品目については金型保管料の請求を検討しましょう
・いずれにしても発注元(顧客)と定期的に十分に話し合いましょう
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